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2015年12月21日

明日へ向かって戦え! ―「さながら元素のように僕らは出会った/犬吠埼一介」

犬吠埼一介さんのプロジェクト「ナイン構想」の全九作品(まだ未完のようです)のうちの一作をようやく読破しました。当初長編かと勘違いしいていたのですが中編なんですね、もっと早く読めば良かったです。

レトロフューチャーなスペースオペラ、との事ですが、銀河をあまねく支配しようとするギャラクシーレギオンとその皇帝ゼノアに抗う若者たちのお話です。学生時代に色々見ていたSFアニメを連想して懐かしい匂いがしました。イラストの影響もあるかもしれません。このままアニメ化しても違和感なさそうですね。

ナイン構想の作品は作者の思想・主義を表現するための作品群とのことなので、メッセージ性や主張が強いのかな、と思っていましたが、普通のエンターテインメント作品として楽しめます。楽しんで読む中で、込められている重要なメッセージ……例えば惑星アディオスの始祖ティバルからロンドが受け継いだ言葉などが、すっと心に入ってきました。


明日を掴んだ主人公たちのラストシーンが、明るい未来への可能性と希望を感じさせてとても良かったです。私はむしろ、彼らの話をもっともっと読みたかったのです。有り体に言えば物足りなさを感じたのですが、元々サーガ形式のお話なのでそういう人は他のエピソードも読もうね!ということだろうから、私としては問題なしです。九作品揃ったときに通して読むと、ナイン構想の真の姿が見えてくるのでしょうか?


小説としてはツイッターでも言ってましたが、本当に「普通に上手い!」です。小説表現・描写に少々悩んでいた私としては、例えば犬吠埼さんなら何をどう書いてるのかな、と考えながら読んでいました。大変参考になりました。うーん、やはりKDPはレベルが高いですね!

とにかく、他のナイン構想作品も是非読もうかと。「蛮勇は世界を巡る」と「割られよ、凍てついた王冠よ」が気になっています。
九編全てを完成させるのはなかなか大変でしょうが、陰ながら応援しています。

<2016.01.02追記>
私が読んだのは古いバージョンの作品で、現在は販売停止中です。リニューアル発行予定とのことなので、読んでみたい!という方はもう少しお待ち下さいね。他の作品は商業出版されたそうです!

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2015年11月03日

世界を、人生を革命するものたち―「ERROR 40X: Remix/本郷功之介」

Revenant Project(レヴナント・プロジェクト)とそれに携わるミヤウチという男を軸に、関わった人間たちがそれまでの人生を変えていく、IT系エンターテインメント小説という印象でした。

高度に情報化され相互にネットワークで繋がれた社会で、その根幹を何者かが握ったら――現実にこういうことがあってもおかしくないと思わせるリアリティを感じました。
前半、これはERROR 403(ハッカーの過去編)の部分だと思いますが、鬱屈としたミヤウチの元の職場での様子、そこから導き出された彼の心情・思想は社会風刺のようで、そういう調子で物語が進んでいくのかな、と思いきや、中盤……多分ERROR 404(Revenant Project編)からは、一気にエンターテインメント性が増していきます。 特に赤いアフロという見た目もやることもど派手なファンキーJ 、それになかなか気のいい連中であるプログラマー集団HERMIT(ハーミット)は私のお気に入りです。

たまたまRevenant Projectの「秘密」を知ってしまった大学生ウメミヤと、ミヤウチのやることに疑問を抱く部下アズマ。彼らの冴えない生活が、この事件と関わったことで変わっていきます。ミヤウチは「世界の変革」と称してRevenant Projectを進めていたわけですが、あるいは彼自身の人生を勝者のそれへと変えたかったのかもしれないのに、結果ウメミヤとアズマに良い変革をもたらしたというのは、なんとも皮肉ですね。

ウメミヤのいわば「大冒険」と、元の日常へ戻った時のアヤコとの微妙な関係――くっつくまではいかないようですが、気持ち的に進展しているような――は読んでてすがすがしかったです。

アヤコは「技術者としての誇り」という言葉を口にします。君には技術者としての誇りはあるのか?技術者でなくても自分の仕事に誇りを持っているか?という作者からの問いかけに思えます。正しい誇りがあれば、仕事で金や権力に釣られて悪事に手を染めることはきっとないんですよね……。

ところで、以前作者のコヲノスケさんこと本郷功之介さん @kohnosukeにこんなお言葉をいただきました。

ううむ……本当に酷評されるような作品ではないと思うし、バトルかどうかは分かりませんが、気になった部分を書きますね。 まず、文章・文体について。 言葉の選び方は適切(唯一、EFG社の社長がファンキーJを「お主」と一回だけ呼んだ部分は違和感を感じましたが)、リズム感も良く全くそつのない文章なのですが、例えるなら新聞記事を読んでいるようでこの作者ならでは!という表現や個性があんまりないなあと。どうしてだろうと考えながら読んでいました。 おそらく、地の文が状況や登場人物の行動の「説明」が中心で、情景や心情の「描写」が極端に少ないせいではないかと思います。その辺の違いについてはこちら:物語は作れたがどんな文章で小説にしていいか分からない人のための覚書 http://readingmonkey.blog45.fc2.com/blog-entry-712.html?utm_source=API&utm_medium=twitter


だから、たまに挿入される描写にぐっときたのも事実です。作品の性質上、説明でテンポ良く話が進んだ方が良いのでしょうが、もう少し描写があった方が、と思います。もっとも、このあたりは作品後半になるにしたがってわりと解消されているので、心配いらない気もします。

第二に、これは作品とは直接関係ないのですが、書籍としての作りについて。
表紙と本文だけ、という超シンプル構造に驚きました。これは作者のポリシーなんでしょうか?その辺のお考えを知ろうとブログなどを拝見したのですが、特に書いてないようです。
一読者として、目次がないのは不便だしこれではなんとも寂しいです。せっかく素敵な作品なのだから、書籍としてもそれに見合った立派な本作りをしましょうよー! あくまでシンプルがいいなら、せめて中表紙・目次・奥付だけでも! 特に目次実装は切に希望します。他の作品も読んでみたいので、読み返したりこうして感想を書くときに大変助かります。

ちなみに私個人の考えを述べれば、中表紙があると物語が始まる前に「よし、始まるぞ読むぞ!」という心の準備が出来るし(舞台で言う幕開けみたいな)、奥付は出版日等の本の基本的な情報を知りたい場合わざわざAmazonにいかなくてもいいし、電書ですと作者のブログやサイト等の情報を載せれば次の本への導線になるかと。ユーザフレンドリーって奴ですかね。

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posted by 平沢沙里 at 10:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 私の読書感想文

2015年08月10日

その結末に、びっくりです……!―「孤独の王/淡波亮作」

「見事に裏切られた……!」
というのが、この作品を読んで最初に思ったことです。このように書くと、え?とか思ったりどきっとするかもしれませんが、慌てずに以下の理由をお読み下さい。

終盤の展開に触れるので(つまりネタバレです)、これから読むよ!という方はご注意下さいね。

作品を読む前に得た「児童文学」「ゲド戦記好きは好みそうな地味なファンタジー」というキーワード、そして物語の冒頭から読み取れる「暴君vs少年と王女」という構図から、私は少年と王女が主人公の英雄譚なのかな、と予想しつつ読み進めていたわけです。

続き….....ヾ( 〃∇〃)ツ

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2015年02月27日

台湾BL本:示見の眼 第一巻・レビュー


蒔舞(シーウ) /著, 猫樹(マオシュー)/イラスト, 黒木夏兒 /翻訳    :2014 10.30

台湾の作家さんで、日本でもデビューしている蒔舞(シーウ)先生の代表作だそうです。
BLなのですがガッチガチのBLというわけではなく、台湾が舞台の霊能力者あるいは心霊ものに男性同士の(現段階ではプラトニックな)恋愛要素が入ってるジュブナイル小説という感じで、BL小説はほとんど読んでいないというか、プロの作家さんが書いたBLにはじめて触れた私でも大変読みやすい作品です。

以前、Kindle版発行前に翻訳者の黒木夏兒さんからいただいた紹介冊子に「微ホモ度MAX!」とあって、「微なの?それとも満ちてるの?」と思ったのですが、読んでみるとまさに微ホモ度MAXです。 そこが逆に萌える!

そして私は声を大にして言いたい、いやフォントを大にして書きたい。

以洋かわいいよ以洋!!

ちょっと頼りないけどとっても純粋な主人公・陸以洋(ルー・イーヤン)くんがひたすらカワイイ。読んでて何度も「以洋くんカワイーww」と呟いてしまいました。料理を作っては同居人?家主?の夏春秋(シア・チュンチウ)さんが食べるのを見て美味しそうに食べてると素直に喜ぶ彼は、わんこのようなかわいさがあります。

以洋くんをはじめ、とにかく登場人物とその関係が魅力的です。
前述の春秋さんと従兄の葉冬海(イェ・ドンハイ)さんは、男性同士ながらお互い想い合っているのですがその心はすれ違ってばかり。読んでて切ないです。
微妙な均衡を保っていた二人の関係が、以洋くんという触媒を得て化学反応を起こし、変わっていくことになります。これからどうなるのかどきどきです!
また、この二人は霊能者の家系である葉家の宿命を背負っています。そこがまたドラマなのです。


以洋くんは台湾大学の院生なのですが、彼の先輩たちもとても気のいい人たちです。易仲瑋(イー・ジョンウェイ)先輩が以洋くんをかわいがる様は読んでて楽しいです。頭なでまくりでまさにわんこ!仲瑋先輩と顧典恩(グー・ディエンウァン)先輩の仲良しぶりも面白いです。あ、どちらも男性ですよ。


とにかく、BL要素ももちろんなのですが、それ以外の部分が作品として非常にクオリティ高いです!一冊読んだだけでも大満足!!
なので小説執筆の参考になりました。私もこんな小説が書けたらなぁと思います。蒔舞先生の筆力を尊敬します。


この大変魅力的な作品を、まるで最初から日本語で書かれたように翻訳なさっている黒木さんにも脱帽です。原作の雰囲気や舞台設定を殺さずに、かつ日本人の読者が萌えるように訳するのは大変なことと思います。


巻末の日本語版の作者後書きによると、この作品は全九巻の長編で、その中で以洋くんが成長していくとのこと。今は頼りなく泣いてばかりいる彼が、九巻の頃はどんなにたくましくなっているのか、今から楽しみです。

すでに示見の眼 第二巻: 明けゆく夜の底で も出ていてDL済みなので、 張り切って読みますよー!

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posted by 平沢沙里 at 11:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 私の読書感想文